再会の夜、同窓会で始まった恋
A real story from our community

三十路を過ぎた私の日々は灰色のベールに包まれていた。仕事と自宅を往復するだけの日常。友人との食事さえ、心の底から笑えているのか分からなかった。そんな時、高校の同窓会の案内が届く。気乗りはしなかったが、何かが変わるきっかけを求め、足を運ぶことにした。
会場のホテルには懐かしい面々が集まっていた。皆それぞれに年を重ねながらも、その面影は昔のまま。その中に彼の姿があった——高橋一真。バスケ部のエースとして女子の憧れの的だったあの少年が、今は大人の男として立っていた。
「もしかして、佐々木さん?」
彼の方から声をかけてくれた。旧姓を覚えていてくれたことに胸が揺れた。
「高橋くん、久しぶりね」
「本当に。美しくなったね」
社交辞令と分かっていても、鼓動が早くなる。彼は少年時代の面影を残しつつ、大人の風格を纏っていた。日に焼けた肌、笑った時に目尻に寄る優しい皺——全てが魅力的に映った。
自然と二人きりで話す流れに。彼は地元企業に勤め、一度結婚したものも三年前に別れたこと、子供はいないことを打ち明けてくれた。寂しげな笑顔に、思わず胸が締め付けられた。
同窓会が終わり、私たちは二次会には参加せず、ホテルのバーで静かに杯を交わした。隣に座る彼の体温が伝わる距離。緊張が甘いスパイスのように全身を巡る。
「佐々木さんは結婚してるの?」
「私は独身よ。恋愛からもご無沙汰で」
自嘲を込めて答えると、彼は真剣な眼差しで言った。
「それは勿体ない。君ほど素敵な人が」
その言葉で心の奥に閉ざしていた何かが溶け出した。アルコールのせいか、彼のまなざしのせいか、頬が火照る。
バーを出ると、私たちは言葉もなくホテルの一室へ向かった。エレベーターで彼の小指がそっと私の手に触れ、高校時代に抱いた淡い想いが、鮮やかな情熱へと変わるのを感じた。
ドアが閉まる音と同時に、彼の腕が私を強く包み込んだ。そして深く、貪るようなキス——十代の頃には知り得なかった大人の口づけ。彼の舌が口内を征服し、理性が溶解していく。
「ずっと、こうしたかった」
嗄れた声が耳元で震える。服が滑り落ち、彼の大きな手が肌を撫でる。指先が通るたびに甘い電流が背筋を駆け上がる。十数年の時を超え、高校時代に交わることのなかった二人の身体が、今ひとつになろうとしていた。
彼が深く進入してきた瞬間、歓喜の声が零れた。それは単なる肉体的快感を超え、凍りついた時間が溶け出す感覚。私たちは夜明けまで絡み合い、語り合い、埋め尽くされた時間を分かち合った。
翌朝、彼の腕の中で目覚めた時、世界の灰色は消えていた。窓から差し込む朝日が未来を照らしているようだ。
「もう佐々木さんじゃないよな?」
「ええ、美咲って呼んで」
「美咲——俺と、始めてみないか」
彼の胸に顔を埋め、幾度も肯いた。同窓会で芽吹いた遅咲きの恋。きっとこれが運命だったのだ。失われた時間を取り戻すように、これからは深く、熱く、愛し合っていくのだろう




