BARで出会った、謎めいた男
A real story from our community

疲れた夜は決まってホテル最上階のバーへ。重厚な扉を開けるとジャズの生演奏と都会の夜景が迎えてくれる。カウンターの隅席が私のお気に入りだった。
ドライマティーニを注文すると、隣に上質なスーツの男性が座った。四十代前半か。影を帯びた横顔が好奇心を刺激した。
「美しい方ですね」
突然の声に驚く。低く響くその声が心地いい。
「何かお悩みですか?」
「どうして?」
「瞳が少し潤んでいます」
心を見透かされた気がし、仕事の悩みを打ち明けた。彼は静かに耳を傾け、最後に言った。
「頑張りすぎです。時には全て忘れて自分を甘やかすことも必要」
心に染みる言葉だった。
「私があなたを甘やかすお手伝いを」
ホテルのルームキーが差し出された。危険な誘いだが抗えない衝動に駆られた。
スイートルームの窓からは宝石を散りばめたような夜景が広がっていた。
「シャワーを?」
頷いて浴室へ。名前も知らぬ男に抱かれようとしている——後悔よりスリルが勝っていた。
バスローブ姿で戻ると、ベッドで待つ彼が手招きした。紐を解かれながら感じる視線に顔が熱くなる。
「本当に美しい」
指が肌に触れた瞬間、電流が走った。巧みな愛撫は官能的で、私の敏感な点を全て知っているよう。そのリードに身を委ねた。
ゆっくりと中に入られ、未知の充足感に包まれた。幾度も求め合い、彼の腕の中でただの女であることを思い出した。
翌朝、隣には誰もいなかった。テーブルには一輪の薔薇とメモ。
『素晴らしい夜を感謝。またあのバーで』
名前も連絡先も不明——それで良かった。再びあのバーで秘密の夜を過ごすだろう。その期待に心が高揚する




