夫の知らない、私の秘密

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夫の知らない、私の秘密

結衣、結婚五年目の専業主婦。夫の隆はエリート商社マンで優しく真面目。外から見れば完璧な夫婦だが、私の心は乾いていた。

隆は深夜帰宅が常態化し、休日は接待ゴルフ。会話は減り、身体の関係も半年以上ない。女として見られていないのが何より辛かった。


「月の雫」というハンドルネームでブログを始めた。満たされぬ欲望や心の渇きを小説に綴るため。見知らぬ誰かに心の内を見て欲しかった。

ブログは唯一の逃避場となった。隆が眠った後、私は物語の世界に没入。作中の私は情熱的に愛され、激しく求められる。現実とは対照的な姿だった。


一ヶ月後「海」と名乗る読者から核心を突くコメントが。

『月の雫さんの描く女性は、寂しさの殻に閉じこもりながら愛を渇望していますね』

私は震えた。彼は登場人物ではなく私自身を見ていた。メッセージで深く語り合うようになり、乾いた心に彼の言葉が染み込んでいった。

ある夜、夫以外の男性に言葉だけで愛される人妻の物語を投稿すると、海から即座にメッセージが。

『今夜、僕が言葉であなたを愛しましょうか』

背徳感と抗えない魅力に「はい」と返信した。


夢のような時間が流れた。彼の言葉が私を優しく裸にし、指が肌を撫で、秘密の場所に触れる。夫との関係では味わったことのない強烈な快感に、言葉だけで幾度も絶頂した。

それから夜ごと言葉で愛し合うようになった。私の求めるものを全て知っているかのような海に、私は深く溺れていった。


ある日、隆が珍しく早く帰宅し小さな箱を差し出した。

「結婚記念日を忘れてたわけじゃない」

開くと美しいネックレスが。胸が張り裂けそうな罪悪感に襲われた。夫は愛していなかったわけではなかった。ただ不器用なだけだと気づいた。

その夜、久しぶりに身体を重ねた。隆はぎこちないながら優しかったが、私の心は満たされず、海の言葉が脳裏をよぎった。


翌日、海に『もう会えない』と伝え、ブログを閉鎖した。妻としてやり直す決意だった。

それでも心の奥底には「海」が住み続けている。夫の隣で眠りながら、あの言葉の愛撫を思い出す。これは墓場まで持っていく私だけの罪であり、女としての自覚をくれた甘美な記憶なのだ

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