雨宿りの甘い罠

A real story from our community

雨宿りの甘い罠

私、田中愛子は、26歳の図書館司書。今日も定時で仕事を終え、傘を忘れてしまったことに気づいた。

外は、土砂降りの雨だった。

「あら、愛子ちゃん、傘、忘れたの?」

同僚の田中さんが、声をかけてくれた。

「はい、ちょっと急いでたもので…」

「じゃあ、私の貸してあげる。私は、まだ仕事あるから」

「でも…」

「いいのよ。明日、返してくれれば」

私は、感謝して、傘を借りた。


でも、家の近くまで来た時、突然の強い風で、傘が裏返ってしまった。

「ああっ!」

傘は、完全に壊れてしまった。

「どうしよう…」

立ち尽くしていると、近くの喫茶店から、男性が出てきた。

「大丈夫ですか?」

振り返ると、そこには、30代後半くらいの、落ち着いた雰囲気の男性が立っていた。

「傘、壊れちゃったみたいで…」

「それは、大変だ。どうぞ、うちの店で、雨宿りでも」

「でも、お客さんじゃないのに…」

「構いませんよ。それに、この雨じゃ、帰れないでしょう?」

私は、彼の優しさに、救われた気がした。


「いらっしゃいませ」

店内は、落ち着いた照明で、ジャズが流れていた。

「僕、店主の佐藤といいます。それにしても、酷い雨ですね」

「私、田中愛子。本当に、すみません」

「いえいえ。それより、冷えてますよね。ホットコーヒーでも」

佐藤さんは、私にコーヒーを出してくれた。

「ありがとうございます」

「どうぞ、くつろいでください。雨が止むまで、ゆっくりしていってください」


「佐藤さんは、一人で、この店を?」

「ええ、もう5年になりますかね。奥さんとは、離婚して、子供は、奥さんのところに」

「そうなんですか…」

「でも、今は、この店が全てです。静かで、落ち着くでしょう?」

「はい、とても」

私たちは、自然に会話を始めた。


「愛子さんは、お仕事は?」

「図書館で、司書をしてます」

「へえ、本が好きなんですね」

「はい。静かな場所が、好きで」

「僕も、同じです。この店も、賑やかさは、求めてないんです」

佐藤さんの目が、優しく細められた。


「実は、今日は、特別な日なんです」

佐藤さんが、ぽつりと言った。

「特別な日?」

「ええ、5年前の今日に、この店を開いたんです。でも、誰も、覚えてない」

「そうなんですか…」

「でも、愛子さんが来てくれて、嬉しいです」

私は、彼の孤独を、感じ取った。


「もし、よかったら、今夜、付き合ってもらえませんか?」

突然の誘いに、どきりとした。

「えっ? でも…」

「ご飯でも、食べましょう。僕、一人で、記念日を祝うのも、寂しくて」

私は、彼の切なそうな表情に、心を動かされた。

「わかりました」


雨が止んで、私たちは、近くの小さなレストランへ向かった。

「実は、ここ、僕の友人がやってるんです。美味しいんですよ」

店内は、家庭的な雰囲気だった。

「佐藤さん、珍しいじゃない。お客様連れて」

店主が、親しげに声をかけてきた。

「今日は、特別な日だから」

佐藤さんは、私を見て、微笑んだ。


「愛子さん、結婚とか、どう思いますか?」

食事をしながら、佐藤さんが聞いた。

「えっ? そうですね…普通に、憧れはありますけど」

「僕も、昔は、家族を大切にしたかった。でも、うまくいかなくて」

「佐藤さん…」

「でも、今は、違います。新しい出逢いも、あるでしょう?」

彼の目が、私を見つめた。


「もう、遅いですね。お送りします」

食事を終えて、店を出た。

「でも、傘が…」

「大丈夫。タクシーで、送りますから」

私たちは、タクシーを待った。


「愛子さん、今日は、本当に、ありがとう」

タクシーの中で、佐藤さんが言った。

「いえ、私も、楽しかったです」

「じゃあ、また、店に来てくれますか?」

「はい、ぜひ」

私たちは、約束を交わした。


「着きましたよ」

タクシーが、私のマンション前に停まった。

「ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

私は、タクシーを降りた。


「愛子さん」

佐藤さんも、タクシーを降りて、私を追いかけてきた。

「実は、もう一度、君に会いたくて」

突然、彼は、私を抱きしめた。

「佐藤さん…」

「ごめん。でも、我慢できなくて」


雨に打たれながら、私たちは、激しく口づけを交わした。

「ん…」

佐藤さんの唇は、冷たかった。でも、次第に熱を帯びていった。


「部屋に、上がって?」

私は、誘った。理性ではなく、感情が、私を動かしていた。

「でも…」

「いいの。私も、佐藤さんが、好き」

私たちは、手を繋いで、部屋へ向かった。


「綺麗な部屋だ」

「ありがとう。少し、散らかってるけど」

佐藤さんは、私の部屋を、静かに見回した。

「本が、多いね」

「はい。仕事の関係もあるけど、本が好きで」


「愛子さん、本当に、いいのか?」

佐藤さんが、私の前で、立ち止まった。

「はい。私、後悔しない」

私は、彼のシャツに、手をかけた。


私たちは、ゆっくりと、服を脱ぎ捨てていった。

「綺麗だよ、愛子さん」

佐藤さんの視線が、私の裸身を這った。恥ずかしさと、興奮が、同時に込み上げてきた。


「冷えてるでしょう?」

佐藤さんは、私の体を、優しくベッドに導いた。

「温めて、あげる」

彼の手が、私の体を這い始めた。

「あ…」


佐藤さんの愛撫は、まるで、大切な本を開くように、丁寧だった。

「ここ、感じる?」

「はい…そこ…」

彼は、私の反応を確かめながら、私を高めていく。


「愛子さん、君のこと、大切にしたい」

佐藤さんは、私の上に重なった。

「私も…佐藤さん…」

私たちは、ゆっくりと、一つになった。


「ああっ…」

痛みと、快感が、同時に走った。

「大丈夫?」

「はい…もっと…」

私たちは、互いの体を求め合った。


「一緒に、行こう」

佐藤さんの声が、耳元で響いた。

「はい…」

私たちは、同時に、頂点に達した。


後で、私たちは、静かに抱き合った。

「愛子さん、ありがとう」

「私も、ありがとう」

でも、私たちの関係は、これからどうなるのだろう。


「また、会えるかな?」

佐藤さんが、不安そうに聞いた。

「はい、もちろん」

「でも、君は、若いし、僕なんか…」

「違うわ。私は、佐藤さんのことを、好きなの」

私は、彼の頬に、キスをした。


翌朝、私は、彼の腕の中で目を覚ました。

「おはよう」

「おはよう」

佐藤さんは、優しく微笑んだ。

「今日から、どうする?」

「変わらない。でも、また、会いたい」

私は、頷いた。


「じゃあ、また、店に来てね」

「はい、ぜひ」

私たちは、雨の中、別れた。

雨宿りが、私たちの運命を変えた。

『雨に打たれながらの口づけ、それが、私たちの始まりだった』

Recommended for you