上司の秘密のキス
A real story from our community

私、田中麗子は、26歳の営業事務。入社して三年目になります。今日も朝から電話が鳴り響き、書類の山に埋もれながら働いている。
「田中、ちょっと来てくれ」
部長の声に、私はハッとした。高橋部長は、35歳の独身。会社でも有名な仕事人で、怖い上司の代名詞的存在だ。でも、私は知っている。仕事の顔の裏に、優しい眼差しを隠していることを。
「はい」
私は、部長室に向かった。ノックをして、中に入ると、彼は書類から顔を上げた。
「実は、今夜、大事な取引先との会食があるんだ」
「はい」
「君も一緒に来てくれないか?相手が女性だから、君の方が話しやすいかと思って」
これは、仕事だ。私は、即答した。
「わかりました」
会食は、銀座の高級日本料理店だった。相手は、大手小売りチェーンの購買部長。確かに、女性同士の方が話が弾む。私は、部長の隣で、一生懸命営業トークをした。
「田中さん、本当に頼もしいわ」
相手の女性部長に褒められて、私は嬉しかった。でも、何よりも、高橋部長が私を誇らしそうに見ていたことが嬉しかった。
会食が終わり、タクシーで帰る途中だった。
「今日は、本当に助かった」
「いえ、私はただ…」
「いや、君のおかげで、契約も決まりそうだ」
彼は、珍しく笑っていた。普段の厳しい表情とは違う、柔らかい笑顔だった。
「部長…」
「実は、君には感謝しているんだ」
「えっ?」
「いつも、黙々と仕事をしてくれて。君のおかげで、私も頑張れる」
そう言って、彼は私の手をそっと握った。私は、心臓が飛び出しそうになった。
タクシーは、私のアパートの前で停まった。
「じゃあ、おやすみ」
「あ、部長」
私は、思い切って声をかけた。
「お茶でも飲んでいかれますか?今回の契約書について、相談したいことがあるんです」
これは、明らかに口実だった。でも、彼は、小さく頷いた。
「そうだな、少しだけなら」
部屋に上がってきた高橋部長は、少し緊張しているように見えた。私も、同じだ。
「本当に、今日はありがとう」
「いえ…」
「君は、いつも私のことを支えてくれているよね」
突然、彼はそう言った。そして、私の目を真っ直ぐ見つめた。
「実は、私…君のことが、好きなんだ」
私は、息を呑んだ。上司から、こんなことを言われるなんて、夢かと思った。
「私…私も、部長のことが…」
次の瞬間、彼は私を抱きしめた。強く、でも優しく。彼の胸の温もりが、私を包み込む。
「本当に、いいのか?」
私は、答え代わりに、彼の背中に手を回した。彼の体は、少し震えていた。
そして、ゆっくりと顔を近づけてきた。私は、目を閉じた。
最初のキスは、優しかった。でも、二度目のキスは、もっと激しかった。彼の想いが、私の心に直接伝わってくるようだった。
彼の手が、私の肩を優しく包み込む。私は、恥ずかしさと、嬉しさが交錯する。
「綺麗だ…」
彼はそう呟いた。その言葉に、私の心が溶けていく。
彼の唇が、私の頬に這う。熱く、優しい感触に、私の体が反応する。
「あっ…」
「大丈夫?」
彼は、私の声を心配するように、優しく抱きしめた。私の体は、彼の優しさに包まれていく。
私たちは、互いの想いを確かめ合った。彼の手は、私の心の奥まで届きそうだった。
「麗子、本当に、愛してる」
「部長…私も…」
「翔太と呼んでくれ。今夜だけは、上司じゃない」
「翔太さん…」
私たちは、心を通わせた。言葉ではなく、想いで。
「麗子…」
彼は、私の名前を何度も呼んだ。そして、私たちは心から一つになった。
朝、私は彼の腕の中で目覚めた。
「おはよう」
「おはよう…」
昨夜のことが、夢のように思えた。でも、彼の温もりは、確かに現実だった。
「今日から、どうする?」
私は、不安になった。会社では、私たちは上司と部下。でも、今は恋人同士。
「心配するな」
彼は、私の髪を優しく撫でた。
「僕たちのことは、誰にも言わない。でも、二人だけの時間は、大切にしたい」
私は、彼の胸に顔をうずめた。彼の心臓の音が、私の鼓膜に響く。
会社に行くと、彼はいつもの厳しい部長に戻っていた。でも、誰にもわからない、私だけに見せる優しい視線があった。
昼休み、コピー室で二人きりになった時。
「今夜、会えるか?」
小さな声で、彼は囁いた。私は、小さく頷いた。
「はい、部長」
「翔太と呼んでくれ」
「はい…翔太さん」
私たちは、短い時間だったけど、熱い想いを確かめ合った。
今でも、私たちの関係は続いている。会社では、完璧な上司と部下。でも、夜になると、愛し合う恋人。
時々、デスクの引き出しに、小さなメモが入っている。
『今夜、七時。いつもの場所で』
私は、それを読むだけで、胸が高鳴る。
誰にも言えない、私たちだけの秘密。でも、だからこそ、もっと愛おしい。
今日も、私は彼の秘書として、完璧な仕事をする。そして、夜には、彼の恋人として、彼を愛す。
「部長、お疲れ様です」
「うん、君も」
私たちは、いつものように、仕事の顔で帰っていく。でも、心の中では、もうすぐ会えるという期待でいっぱいだ。
『今夜も、あなたに会える。それだけで、私は幸せ』




