書店の店主との、文学的な恋

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書店の店主との、文学的な恋

古書店の独特の香り——古紙とインクが織り成す匂いが物語の世界へ誘う。週に一度、私は「言の葉の森」という店を訪れていた。

店主は私と同年代で、やや無愛想な男性。いつもカウンター奥で本を読み、私が来ても顔も上げず「いらっしゃいませ」と呟くだけ。

それでも気になった。彼が読む本、好む物語——こっそり盗み見ては同じ本を買い求めた。


ある日、珍しく彼が話しかけてきた。

「その本、面白いですよね」

手にしていたのは彼が先週読んでいた恋愛小説だった。

「ええ、とても」

「その作家の他の作品は?」

その日から本を介した対話が始まった。想像以上に饒舌で情熱的な彼。好きな作家、物語について時間を忘れて語り合った。


ある夜、閉店時間を過ぎても話が尽きない。彼はシャッターを下ろし、ワインを勧めてくれた。

薄暗い店内で杯を傾ける。月明かりに浮かぶ背表紙が幻想的な世界を醸し出す。

「あなたはまるで物語の主人公のようだ」

突然の言葉に戸惑いながら、仕事や家族、恋愛について語り始めた。彼は黙って聴き、最後に繰り返した。

「本当に主人公のようだ」

インクで汚れた温かい手がそっと触れる。自然に唇が重なった——物語のワンシーンのようなロマンチックな口づけ。古書とワインの香りが理性を溶かした。


店奥の私室——本に埋もれた空間で結ばれた。物語を紡ぐように丁寧な愛撫。彼の物語のヒロインになった錯覚に陥った。


それから閉店後の古書店で密会を重ねる。互いの身体を探求し、新たな物語を二人で紡いでいく。この文学的な恋の結末はまだ誰にもわからない

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